小説集
長編小説を主とした小説集……1.小説「ゴエモン」−−2.小説「才蔵」−−3.小説「拙者、才蔵」−−4.「日本軍上陸−パタニ王国」(新連載)−−4つの小説をお楽しみください。
プロフィール

石川淳也

Author:石川淳也
【石川淳也】小説「ゴエモン」著者
高校三年生。現在、大学受験勉強に悪戦苦闘中。
ゴエモンは小学2年生のときに我が家に来て、8年間一緒に暮らしました。
この物語は、ゴエモンとの思い出に少しだけ脚色したものです。

【山崎ミカ】小説「才蔵」著者
現在、高校二年生。中学生のとき才蔵と出会い、二人で生活しています。この小説はミカと才蔵の不思議な関係と二人の活躍を少しだけ脚色したものです。

【宮根真司】小説「拙者、才蔵」著者
本名、霧隠才蔵。山崎ミカとタイへ旅行した際、不思議な出来事に遭遇した。事件もあった。それらを小説にしたもの。

【田中廣一】小説「日本軍上陸」著者
拙者、才蔵に出てくる山田長政、山田オクン、脇坂、里見等と不思議な体験により出会った。その体験を小説にしたもの。


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第五章 一九四一年十二月九日 No.6
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 現在、「日本軍上陸 − パタニ王国」を連載中です。
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小説「才蔵」目次、紹介、あらすじ  【主な登場人物】

小説「ゴエモン」目次とあらすじ(第一巻終了) 


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 日本軍上陸 − パタニ王国



第五章 一九四一年十二月九日 


 ====

 兵達は取り囲んでいる中国人達に銃を向けている。

 この状態がしばらく続いた。

 日本人は十七名。中国人は百人を超えている。

 銃の知識がない廣一でも日本兵の銃は、マシンガンのように何発も連射できないことは見て分る。

 一発か二発撃てば、玉を込め直さなければならない。だから、銃を持っていると言っても、日本人の方が不利である。

 おまけに、長谷川は中国人の味方をするかもしれない。

 日本兵達に不安が生じ、すこしではあるが、あとずさった。

 この場を何とかしなければならないと田中少尉は思った。

 その時、安中少尉が口を開いた。

「長谷川さん、トラックで私達をマレーへ通ずる道へ運んでください」

 長谷川は黙って動かない。

 難波軍曹が長谷川に銃口を向け、「トラックを出せ! 早くしろ!」と、悲鳴にも近い声で叫んだ。

 それでも長谷川は動かなかった。無言の抵抗をしている。

 日本兵達が中国人に殺されることを期待しているのかもしれない。

 軍曹は長谷川に近寄り、銃座で長谷川の腹を殴りつけた。

 長谷川は「うーっ」とうめきながら前かがみの姿勢になった。








 そのとき、「ダーン」一発の銃声。

 中国人の輪をさらに取り巻くように、いつの間にか武装した男達が立っていた。その数は二百人に近い。

 男達の服装は統一されていない。中には上半身裸の者もいる。皆がイスラムの帽子をかぶっている。マレー人だ。

 ほとんどがピストルを腰に下げ、別の銃を中国人に向けている。

 その中の一人が出てきた。

 谷豊だ。

 ジャングルの中を駆け巡ってきたのであろう、半袖のシャツが汚れている。

 マレー人の中からハリマオという言葉が聞こえた。それを聞いた中国人の輪がさーっと広がった。

 ハリマオは倒れているヘーロンとシャオユイのそばに来た。

「たっ、谷君」

 難波軍曹に殴られ、うつむきながら長谷川が言った。

 その声が聞こえたはずだが、それを無視してハリマオこと谷豊は、「誰がやった!」と日本語で怒鳴った。

「だっ、誰だお前は」

 難波軍曹が銃を向けた。その銃剣にはシャオユイの血がついている。

「貴様か、こん子ば殺したのは」

 谷は難波軍曹の前に行き、その顔を殴りつけた。

 あまりの勢いによろけた軍曹は銃を撃とうとしたが、谷の迫力からか、周囲を取り巻いている谷の部下達の多さからか、何もできない。

「こぎゃん罪のなか子ば殺すのが日本軍か! 日本は正義のために戦争ばするのではなかかーっ!

 これでは支那人に殺された妹と同じではなかか」

 谷はしばらく無言でいたが、

「俺は日本に騙されているのかもしれない」とぽつりと言った。

 そして、田中少尉の前へ立ち

「あんたが長谷川しゃんに言ったことが正しいのかも知れん」

 田中少尉は刀をジャングルへ投げ捨てずに持っていたら、軍曹と同じように殴られていたであろう。

「貴様日本人のようだが、何者だ」

 廣一は谷豊を知っているが、祖父の田中少尉は知らない。

 田中少尉の言葉に、谷は薄く笑いながら長谷川へ

「この兵達ば連れて行ってくれんね」と言い、

 難波軍曹に向かい

「俺に殺されたくなければ、早くトラックに乗れ」と怒鳴った。

 日本兵がトラックの荷台に乗った。

 長谷川が運転席でエンジンを掛けた。

 トラックが動き出した。

 助手席で田中少尉が窓から身を乗り出して振り返ると、そこには谷の姿も彼の部下達の姿もなかった。

 ヘーロンとシャオユイを取り囲む中国人達だけがいた。


 ==今回はここまで==



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