小説集
長編小説を主とした小説集……1.小説「ゴエモン」−−2.小説「才蔵」−−3.小説「拙者、才蔵」−−4.「日本軍上陸−パタニ王国」(新連載)−−4つの小説をお楽しみください。
プロフィール

石川淳也

Author:石川淳也
【石川淳也】小説「ゴエモン」著者
高校三年生。現在、大学受験勉強に悪戦苦闘中。
ゴエモンは小学2年生のときに我が家に来て、8年間一緒に暮らしました。
この物語は、ゴエモンとの思い出に少しだけ脚色したものです。

【山崎ミカ】小説「才蔵」著者
現在、高校二年生。中学生のとき才蔵と出会い、二人で生活しています。この小説はミカと才蔵の不思議な関係と二人の活躍を少しだけ脚色したものです。

【宮根真司】小説「拙者、才蔵」著者
本名、霧隠才蔵。山崎ミカとタイへ旅行した際、不思議な出来事に遭遇した。事件もあった。それらを小説にしたもの。

【田中廣一】小説「日本軍上陸」著者
拙者、才蔵に出てくる山田長政、山田オクン、脇坂、里見等と不思議な体験により出会った。その体験を小説にしたもの。


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第五章 一九四一年十二月九日 No.3
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 現在、「日本軍上陸 − パタニ王国」を連載中です。
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小説「才蔵」目次、紹介、あらすじ  【主な登場人物】

小説「ゴエモン」目次とあらすじ(第一巻終了) 


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 日本軍上陸 − パタニ王国



第五章 一九四一年十二月九日 


 ====

「田中少尉、どうしたのですか?」

 子供達は初めて日本兵を見た。シャオユイはおびえてヘーロンの後ろに隠れた。

 ヘーロンもおびえた顔に変わった。

 長谷川がタイ語で二人に何か言った。

 ヘーロンは長谷川にうなずき、シャオユイの腕を取って立ち去ろうとした。

 しかし、シャオユイはヘーロンのようには動けなかった。

 ヘーロンがシャオユイにタイ語で何か言った。

「シャオユイ、早く! 早く!」とでも言ったのであろう。

 その言葉の中のシャオユイというタイ語の響きとは異なる声は田中少尉や安中少尉達にも聞き取れた。

 難波軍曹が「こいつら、支那人じゃあないのか」と、長谷川に言った。

 そのとき、シャオユイが振り返り、言った。

「タナカーサン、リンリン姉サント……」

「おい。こら、待て!」

 と、言いながら難波軍曹がヘーロン達の方に走り出した。

 ヘーロンが振り向き、駆けてくる軍曹を見て、シャオユイを引っ張って逃げようとしている。

 しかし、子供と大人の違い、二人は難波軍曹に捕らえられた。

 二人は顔が引きつっている。シャオユイは今にも泣き出しそうだ。

 しかし、極端な恐怖からか、泣く事もできないでいる。泣けば、もっと恐いめにあいそうに思えた。

 難波軍曹は田中少尉に銃口を向けた。それに同時して、他の兵達も田中少尉、長谷川、ヘーロンとシャオユイを取り巻き、銃口を向けた。

「ぐっ、軍曹! なにをするのだ! お前達も銃を降ろせ」

 安中少尉が怒鳴った。

 しかし、兵達に銃を降ろす様子はない。

「こいつらは支那のスパイです。

 子供を伝令に使って私達のことをどこかに伝えようとしたのでしょう。

 そうだな。おい」

 難波軍曹が少尉に言った。

「田中少尉、あなたは日本軍人ではないのですか?」

 と、安中少尉が聞いた。

「何を馬鹿なことを! 俺は第五師団所属の少尉である。神山大佐から密命を受けて、安藤支隊のパタニ上陸地点を長谷川氏の協力で指示した者である」

「少尉、騙されてはいけません。

 少尉は初の出兵で経験がないでしょうが、我々は今まで何度も支那人に騙されました」

 難波軍曹が安中少尉に言った。

「日本軍人である何か証拠を見せてください。

 それに私は、シンゴラ上陸の部隊が第二十五軍と名づけられていることは知っていますが、安藤支隊というのがパタニで上陸をしたということは聞かされていません」

「当たり前だ! この上陸はすべて極秘に行われている。

 少尉、君達も、海南島の三亜港を出航した後でシンゴラ上陸作戦を聞かされたはずだ。

 私も神山大佐から第二十五軍がシンゴラで上陸し、その支隊として安藤隊がこのパタニで上陸すると聞かされているだけだ。

 シンゴラ、パタニ以外の海岸でも日本軍の上陸が行われているかもしれない。

 それに、民間人になりすましている俺に日本軍人である証拠の品などない」

「では、支那人の子達と少尉の関係は? この子が言ったリンリンという支那の女との関係はどう説明するのだ!」

 軍曹はヘーロンとシャオユイに銃の向きを変えて言った。

「タナカーサン、助ケテ」と、ヘーロンが言った。

「化けの皮がはげてきたようだな」

「知らん、身に覚えのないことだ。なぜ、この子達が俺の名前を知っているのか訳が分らん。

 長谷川さん。この子達は一体何者だ? リンリンとは何者だ?」

 長谷川は応えなかった。

「おい、長谷川さん。何とか言ってくれ! このままでは支那のスパイにされてしまう」

「言い逃れしようとしても無駄だ。スパイでないのなら、この支那人を殺してみろ。

 どうせ敵国の人間だ。殺せば殺すだけ我が軍の勝利に近づくのだ」

「タナカーサン。助ケテー」

 ==今回はここまで==



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