小説集
長編小説を主とした小説集……1.小説「ゴエモン」−−2.小説「才蔵」−−3.小説「拙者、才蔵」−−4.「日本軍上陸−パタニ王国」(新連載)−−4つの小説をお楽しみください。
プロフィール

石川淳也

Author:石川淳也
【石川淳也】小説「ゴエモン」著者
高校三年生。現在、大学受験勉強に悪戦苦闘中。
ゴエモンは小学2年生のときに我が家に来て、8年間一緒に暮らしました。
この物語は、ゴエモンとの思い出に少しだけ脚色したものです。

【山崎ミカ】小説「才蔵」著者
現在、高校二年生。中学生のとき才蔵と出会い、二人で生活しています。この小説はミカと才蔵の不思議な関係と二人の活躍を少しだけ脚色したものです。

【宮根真司】小説「拙者、才蔵」著者
本名、霧隠才蔵。山崎ミカとタイへ旅行した際、不思議な出来事に遭遇した。事件もあった。それらを小説にしたもの。

【田中廣一】小説「日本軍上陸」著者
拙者、才蔵に出てくる山田長政、山田オクン、脇坂、里見等と不思議な体験により出会った。その体験を小説にしたもの。


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第四章 一九四一年十二月八日 No.7
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 現在、「日本軍上陸 − パタニ王国」を連載中です。
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小説「才蔵」目次、紹介、あらすじ  【主な登場人物】

小説「ゴエモン」目次とあらすじ(第一巻終了) 


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 日本軍上陸 − パタニ王国




第四章 一九四一年十二月八日 


 ====

 廣一は長谷川に助けられたように思えたが、実はそうではなかった。

 一人残された廣一に上陸してくる兵士達が、話しかけてくるのである。

 廣一はうかつに返事が出来ない。微笑んでいるだけだった。

「孝三! 俺だ! 俺だ!」

 一人の兵士が言った。廣一と先ほどから目があっていた男だ。

 田中とか少尉などの呼び方ではなく、祖父の名前を呼んでいる。

「やあ、船酔いはしなかったか?」

 先に上陸した兵と少尉の会話を真似て言った。

「便所に何度も通ったそ。上陸したら大丈夫と思っちょったが、今度は地面が揺れちょるでのんた」

 廣一が子供の頃、萩で聞いたことがある山口弁だ。

「地面が揺れる感覚はしばらく続くと思うぞ」

 また、少尉を真似て言った。

「孝三、どうしたんかね? お前らしゅうないねえ」

 田中少尉とどういう関係なんだ?

 その時、長谷川と上官が戻って来て、「貴様ら、何をしとるか!」と、怒鳴った。

 男は、「じゃあな」と言って駆けて行こうとしたが、振り向いて、

「おふくろに手紙を書くことがあれば、俺が千代子のことを心配しちょったと書いちょくれのんた」と言った。

 千代子? あっ、思い出した。




 廣一は小学生の頃、夏休みになると毎年のように山口県萩の祖父の家に遊びに行っていた。

 祖父の隣の家が祖父の兄の家だった。しかし、その頃はすでに祖父の兄は亡くなっており、その妻が一人で生活をしていた。名前が千代子だった。

「若い頃の千代子さんは病弱で、戦時中、兄貴は千代子さんのことを心配していた。その兄が千代子さんよりも先に亡くなった。

 人間の運命は分らないものだ」と、祖父が言っていたのを思い出した。

 ということは、今の男は祖父すなわち田中少尉の兄…… ああー、もっと気のきいた言葉をかければよかった。




 この部隊も上陸を終え、マレー方面の道へ南下していった。

 長谷川が上官をマレー方面へ南下する道を案内していたとき、その上官から、日本軍が海南島の三亜港を出航した後イギリスの偵察機に見つかったと聞かされたことを廣一に伝えた。

「大船団の移動ですから、フィリピンを統治しているアメリカ海軍の船や潜水艦、マレーを統治している英国の偵察機に見つかることも、ある程度予想されたことなのでしょう」と言い、

「昨日と今日も来た英国の偵察機は、その情報を得ていたのでしょう」とも言った。

 パタニの住民の誰かがイギリス軍に通報したのではなかった。




 最後の軍艦が水平線上に見えたのは、それから三時間が経過していた。

 今度は、少尉を知っている者がいなかった。

 最後の部隊も無事にマレー方面の道へ南下して行った。

「疲れましたね」

 と廣一が長谷川に言った。

「家に戻ってひと休みしますか。

 ただし、その前にゴム農園に行って、支那人達に状況を話なさなければなりません」


 ==今回はここまで==



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