小説集
長編小説を主とした小説集……1.小説「ゴエモン」−−2.小説「才蔵」−−3.小説「拙者、才蔵」−−4.「日本軍上陸−パタニ王国」(新連載)−−4つの小説をお楽しみください。
プロフィール

石川淳也

Author:石川淳也
【石川淳也】小説「ゴエモン」著者
高校三年生。現在、大学受験勉強に悪戦苦闘中。
ゴエモンは小学2年生のときに我が家に来て、8年間一緒に暮らしました。
この物語は、ゴエモンとの思い出に少しだけ脚色したものです。

【山崎ミカ】小説「才蔵」著者
現在、高校二年生。中学生のとき才蔵と出会い、二人で生活しています。この小説はミカと才蔵の不思議な関係と二人の活躍を少しだけ脚色したものです。

【宮根真司】小説「拙者、才蔵」著者
本名、霧隠才蔵。山崎ミカとタイへ旅行した際、不思議な出来事に遭遇した。事件もあった。それらを小説にしたもの。

【田中廣一】小説「日本軍上陸」著者
拙者、才蔵に出てくる山田長政、山田オクン、脇坂、里見等と不思議な体験により出会った。その体験を小説にしたもの。


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第一章 亡霊達 その45
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小説「才蔵」目次、紹介、あらすじ  【主な登場人物】

小説「ゴエモン」目次とあらすじ(第一巻終了) 


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 才蔵でござる。 読者諸君、すまぬことをした。

 途中で筆が折れてしまうかも知れぬと、最初に述べたが、その通りになってしまった。

 事件に巻き込まれて、シャムでの出来事を最後まで物語として書き終えることが出来なくなった。
 何か月も放っておいて申し訳ない。お詫びする。

 麻薬不法所持の現行犯で逮捕された石井雄一や野村晃達日本人のその後の結末を述べることにする。

 ======

 才蔵はその後もビデオを撮り続けた。

 警察の幹部と思われる男が蛇の刺青をした男達のところへ出入りしている場面も録画した。

 才蔵はこれをタイのテレビ局と新聞社に送ろうとしたが、山崎健介はそれに反対した。

タイは民主国家であるが、警察にマスコミが押さえつけられてしまうかもしれない。そのようなことが度々あったと、言うのでのある。

山崎は日本のマスコミに送るのが良いと言う。

多くの日本人が無実の罪で逮捕され、タイの刑務所にいると日本国内で報道し、タイの警察が抑えることができない状態にして、その後タイのマスコミに送るのが効果が大きいと言う。

果して、山崎の言う通りになった。

日本のマスコミはタイの刑務所にいる者の家族を中心に取材した。刑に服している者の氏名は直ぐにわかる。だから、その家族に最初にたどり着いた。

「息子は無実の罪で捕えられ、懲役二百年の刑に処せられている」と涙声で訴える家族の姿がテレビ画面で何度も報道された。

 そういう報道を流しながら、マスコミはビデオに映っている日本人で唯一日本にいる男にたどり着いた。

 その男は野村という。

 野村は日本へ帰国するためにホテルを出発するとき、日本国内へ郵送する封筒を預かったが、空港へ到着して、空港警備官からカバンを開けるように言われたときには、その封筒は無かったと、言った。

 思い出してみると、空港へ向うタクシーが高速道路を走っているとき、隣を走るタクシーから、ドアのウィンドーを下げるように合図されたが、下げなかった。

 にもかかわらず、どうしたわけか、合図をした男がいつの間にか同じタクシー乗り移っていた。その男が封筒を取ったのかもしれないとも言う。

 隣を走っているタクシーから乗り移った男が野村を助け、ビデオを撮り続けた人間であろうとマスコミは判断した。

 しかし、その男自身はビデオに映っていない。

 マスコミはその男を捜したが、才蔵にはたどり着けなかった。


 このニュースが日本国内で大きくなったときに、タイのマスコミにビデオを送った。

 すでに、タイのマスコミの一部は日本で報道されていることをタイ国内でも報道していた。

 日本のマスコミもタイの警察や裁判所に対して取材を執拗なまでにしており、タイ国内のマスコミを警察は抑えることができなくなっていた。

 タイ国内でも大々的に報道された。

才蔵が撮った映像が動かぬ証拠となり、蛇の刺青をした男達一味が逮捕された。

蛇の刺青の男達が悪の全てを警察で話した。

 金縁眼鏡の男はタイにどっぷりとはまり込んだ日本人だった。

安い生活費でのんびりと暮らしている。ビザの有効期間が切れそうになると隣のカンボジアやラオスに行き、そこで、タイのビザを取得して再びバンコクに戻るということを繰り返していた。

安い生活費でも所持金に残りが少なくなってくる、お金を稼がなければならない。かと言って、働く気にもならない。

そんなときに蛇の刺青の男から誘われた。日本人に麻薬入りの封筒を渡すという簡単な仕事でまとまったお金が入ってくる。

悪いこととは知りながら続けるうちに、罪の意識は消えていった。

この男も逮捕された。

 警察の幹部と思われていた男も逮捕された。ヤワラー地区を管轄する警察の署長だった。

 一連の逮捕が続いた後に、刑に処せられている日本人達の再審が行われた。

 多くの日本人が刑務所から出ることができた。


 山崎健介は宮根こと、才蔵の一連の行為を知っている。

 山崎は才蔵が人前に出たがらないそぶりから、マスコミに公表しなかった。


 =====

 才蔵でござる。
 こんな形になってしまったが、やっと、この物語を終えることが出来てほっとした。

 ところで、前半にでてきたアユタヤの亡霊達のことを覚えているか? 山田長政、山田オクン、脇坂、里見といった武士の亡霊のことを。

 実はこのブログを見た福岡の田中という人から、彼ら4人を知っているという連絡があった。

 では、田中という男は拙者と同じようにタイムスリップした男かと思った。…… が、そうではなさそうだ。今のこの世に生まれて、大昔の山田長政等と会っているというのだ。

 詳しい話を聞いていない拙者には訳のわからぬことではあるが、「では、そのことを物語にして、この小説集に載せてもらえないか」と田中氏に頼んでみた。

 引き受けてくれるそうだ。

 このブログの総括管理人である。石川淳也も了解した。

 この小説集は、次回から田中氏によって「日本軍上陸」タイトルの物語を載せることになった。

 ==今回はここまで==



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 日本軍上陸 − パタニ王国



 始めまして。田中廣一といいます。

 この物語は二十年前のできごとですが、昨年の出来事に変えています。
 主な舞台はタイの南部のパタニという土地です。
 二十年前のパタニは外国人が多く訪れるというような雰囲気はありませんでしたが、行けないことはありませんでした。
 現在は、反政府テロ組織による爆破事件等が頻発しており、日本外務省も現地への入域をやめるよう勧告をしています。
 詳しくは、外務省海外安全ホームページをご覧ください。

 この物語を読んで、行ってみたいなどと思わないようにくれぐれもお願いします。


 =====


プロローグ − パタニ王国へ

  一

 浜を洗う水に冷たさを感じるようになった。

 波打ち際に一人立つ若い侍の姿。―― 裸足の足と袴のすそを濡らしながら、引き返す海水が白い泡をたてている。

 頭上の太陽は少し西へ移り、この男の影が浜にできた。

 この若者は毎日のようにここへ来て、彼方に微かな弧を描く水平線を眺めていた。

 サクッ、サクッ

ゆっくりと砂を踏む音が近づいてきた。

「おう、奈良井屋か」若者が振り向いて言った。

 奈良井屋は波に触らぬように若者の後ろに立ち、同じように水平線に目を向けた。



 ここは山陰の萩、菊が浜。水平線の向こう側には朝鮮半島がある。

 この若者、田中数馬は毛利の武将として半島に渡った父親からいく度となく朝鮮での話を聞いていた。

 豊臣秀吉の命令で全国の大名が朝鮮半島に渡り、朝鮮国軍と戦った話。―― 多くは手柄話であった。が、…… 数馬は手柄話よりも、話のあい間にもれる半島の文化に興味をもった。

 半島では文官、武官は勿論、一般庶民までもが城壁で囲まれた広い区域内で一緒に暮らし、我々の理解できない言葉を使い、衣装、食べ物、建物も異なると聞いた。

 父の話は若い数馬の血に何かをそそいだようだ。

 朝鮮国のことを思い浮かべ、その想像の世界に数馬自身を入れて行動してみる。そこに数馬の冒険の世界があった。

 そういう思いが毎日のように海に導いていた。海を眺めては、向こうの知らない世界を想像するのである。



 海面が太陽に照らされてキラキラと光る。目を細めて視線をずらすと、視界に指月城。―― 天守閣の屋根瓦も陽に照らされて光っている。

 萩は今の山口県、長門と周防の二国をまとめる政治の中心。指月城は藩主毛利輝元の居城で指月山の麓にある。

 元々、毛利は今の広島県吉田町を中心とした豪族であった。元就の時代に最も勢いが強く中国に毛利ありと、戦国の武将達から一目おかれるようになった。この頃はすでに居城を広島に移している。

 しかし、元就の孫、輝元の時代になってその家運に陰りがでてきた。中国地方のほぼ全域をその領土としたが、織田信長と豊臣秀吉の全国統一の動きに毛利も巻き込まれたのである。

 秀吉の死後、関ヶ原の合戦では豊臣方の総大将としてまつりあげられたが戦に敗れた。
徳川家康の策略によって毛利はその領土の大半を幕府に取られ、長門と周防の二国のみとなった。おまけに、幕府に謀反をおこす可能性がないことを示すために、山陽道ではなく交通不便な山陰の萩に居城をおくことになったのである。



 奈良井屋義衛門は毛利家が広島を拠点としていた時代から、毛利と共に栄えてきた商人である。元は瀬戸内の村上水軍の出であり、みずから船団に乗り組み、取引が成立しない相手の船を襲うようなこともあったという。

「奈良井屋は海の向こうの半島に行ったことがあるか?」数馬は再び視線を海に戻して言った。

「いえ、朝鮮には行ったことはありません。

 私の商いは、もっぱらルソンやバタビア、コーチン、シャムなどが相手でした」

「それらの地は朝鮮よりも遠いのか?」

「はい、遠いところです。

 朝鮮の気候はこの地と似ていますが、ルソンやシャムなどは年中暖かく、米は年に二度も三度も取れます。それに我らの知らない野菜や果物も多く取れます」

「そこへは商人しか行くことができないのであろうな」

「商人だけでなく、職人達も行って住みついています。日本人町と呼ばれるところもあります」

「まさか、武士は行っていないであろう」

「いいえ、戦国の世も終わり、彼の地で傭兵となった方々もいます。

例えば駿河の山田長政というお侍は、シャムに渡って日本人町の頭領となり、シャム王国の重臣になっています」

「ほう! この海の向こうの半島よりも面白そうだ。是非行ってみたい」

「はい、数馬様にも行ってもらいたいものです」



 数馬の父忠衛門は毛利の勘定奉行である。そのため多くの商人が田中家へ出入りしていた。奈良井屋義衛門もその一人である。

 田中家には男三人と女一人の子がいた。

 奈良井屋は田中家次男の数馬に目をつけるようになった。

 数馬の兄弟をはじめ、武士の多くは毛利家の中で出世を考えていた。勿論、数馬の意識の中にも出世はある。しかし、それよりも面白いことをしたい。自分の思う生き方をしたいという思いの方が強かった。そういう感性に奈良井屋が引かれたのである。 

==今回はここまで==



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日本軍上陸 − パタニ王国


 ====

「兄上ーっ、兄上ーっ!」

 奈良井屋との会話をさえぎるように、声変わりをしていない童女の大きな声。―― 振り向くと、土手の上で妹の早苗が手を振っている。そばには爺の三郎兵衛がいた。

 腰をかがめた爺が何か言い、早苗がこくりとうなずいている。

 数馬のところからは距離があり、二人の会話は聞こえないが「お嬢様、ここでじっと動かないで待っていてください」とでも言っているのであろう。

 早苗をそこに残して爺は土手をおり、息を切らしながら砂の上を走って来た。

「爺、どうした」

「ハァー、ハァー、旦那様がお呼びです。何かお話しがあるようです。お屋敷にお戻りください」

「何だろう? 父上が俺に話とは」

「数馬様にとってよい話だと思いますよ」

 そばで奈良井屋が言った。

「何か知っているのか?」

 奈良井屋は応えなかったが、その顔には笑みが含まれていた。



 土手にあがると早苗が「兄上、お手をつないで!」と手を差し出した。―― 強く握ればくだけてしまいそうな小さく柔らかな手、数馬は十八歳、早苗は十歳である。

 数馬と早苗が並んであるいた。後ろを奈良井屋と爺がつづいた。

「兄上、何をお話していたの?」

「海の向こうの話さ」

「海の向こうって、唐や天竺のこと?」と、早苗はつないだ手を振りながらが聞いた。

「まあ、そんなところだな」

「早苗、行ってみたいな」

「そうか、お前も行ってみたいか、俺と同じだな、あっはは」



 屋敷に戻ると、数馬は父の忠衛門の前に呼ばれた。母と兄もいた。

「数馬、殿の密書を持ってシャムに行ってもらいたい」

「お前も知っている通り、今我が毛利家は困窮している。それを打開するために、シャムと交易をしようと思う。

 奈良井屋とシャムに渡り、交易の可能性を探ってくるのがお前の役目だ」



 関ヶ原の合戦、大坂冬の陣、夏の陣で多くの戦国大名がつぶされ、その家臣は浪人、すなわち失業武士の身となった。

 つぶされなかった大名も徳川幕府に領土を削り取られ、禄高が減り家臣を養うことができなくなった。結果、今で言うリストラを行い浪人がさらに増えた。

 中国地方を領土としていた毛利も長門と周防の二国に領土を減らされた。しかし、毛利はその家臣を手放さなかった。

 禄高が激減したにもかかわらず、養う家臣の数は変らない。これでは経済的に困窮するのは当たり前である。

 毛利の勘定奉行である田中忠衛門は産業起こしを家臣に呼びかけ、いくつかの試みを行ったが、いずれも満足の行くものではなかった。

 田中忠衛門は困りにこまった。

 そのようなときに奈良井屋義衛門から、海外との交易という提案があった。―― 国内が無理なら海外から産品を輸入し、それを他藩に売って利益を得よう。―― 毛利領内の産品で

 輸出できるものがあれば輸出しようというのである。

 一方、徳川幕府は他の大名には海外との交易を許さず、平戸および長崎での交易を独占していた。

 さらに平戸を廃止し、長崎を通じてオランダとのみ交易をするようになった。

 このような状況では、毛利はおおっぴらに海外との交易をすることはできない。密交易しか方法はない。

 では、どこと行う?

 奈良井屋義衛門はシャムの山田長政からの書簡を持っていた。

 ==今回はここまで==



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