小説集
長編小説を主とした小説集……1.小説「ゴエモン」−−2.小説「才蔵」−−3.小説「拙者、才蔵」−−4.「日本軍上陸−パタニ王国」(新連載)−−4つの小説をお楽しみください。
プロフィール

石川淳也

Author:石川淳也
【石川淳也】小説「ゴエモン」著者
高校三年生。現在、大学受験勉強に悪戦苦闘中。
ゴエモンは小学2年生のときに我が家に来て、8年間一緒に暮らしました。
この物語は、ゴエモンとの思い出に少しだけ脚色したものです。

【山崎ミカ】小説「才蔵」著者
現在、高校二年生。中学生のとき才蔵と出会い、二人で生活しています。この小説はミカと才蔵の不思議な関係と二人の活躍を少しだけ脚色したものです。

【宮根真司】小説「拙者、才蔵」著者
本名、霧隠才蔵。山崎ミカとタイへ旅行した際、不思議な出来事に遭遇した。事件もあった。それらを小説にしたもの。

【田中廣一】小説「日本軍上陸」著者
拙者、才蔵に出てくる山田長政、山田オクン、脇坂、里見等と不思議な体験により出会った。その体験を小説にしたもの。


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才蔵(サイゾー) 第三章 血のつながり No.15
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小説「才蔵」目次、紹介、あらすじ【現在進行中】 【主な登場人物】

小説「ゴエモン」目次とあらすじ(第一巻終了) 


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 山崎ミカです。

 校長先生は、いじめについて先生達と話し合ってみると言っ

ていましたが、その様子はありません。

 前回、私を納得させるために、私を言い含めるために言った

のだと思うようになりました。―― それで、才蔵お兄さんが

考えた方法は?




 ==では、どうぞ!==


 それから二週間が経過した。

 校長がいじめについて、他の教師と話し合うと言っていたが、その後

の変化はなかった。

「教師達は、いじめに係わりたくないのであろう。

 だから、何もしないのだ」

 才蔵がミカに言った。

「そんなの変よ。助けてくれなくっちゃあ、先生ではないわ」

「ミカ、テレビ放送局へビデオテープを送くるとどうなる?」

「そうねえ、ニュースになれば先生達も困るでしょうね。

 それから、いじめについて何かしなければなくなるでしょうね。

 でも、誰がビデオで映したかも問題になるかも知れないわ。

 このマンションにも取材で多くの人が来るかも知れないわ」

「そうか、では放送局へミカの名前を入れずに送るとどうなる」

「…… 放送局がどの中学校かを調べて、ニュースに流すかもしれない

わ。

 ここには取材に来ないと思う。そうね、放送局へ送ってみよう」

 ミカは寺山がいじめられている場面、ミカが間違えられて教員室と校

長室で叱られている場面に、校長室で校長がミカに謝り、ビデオテープ

のことを聞いている場面も加えようとした。

「その最後の場面は入れない方がよい」

「どうして?」

「そこまで校長を困らせれば、嫌味というものじゃ。

 大人げないと思われてしまう」

「だって、私は大人じゃあないわ!

 この場面を入れれば面白いと思ったのだけど、校長先生のプライドも

何も無くなって、いい気味だと思うのだけど」

「ミカは、仕返しをしたいのか、教師達にいじめを無くして欲しいの

か、どっちだ?」

「両方だけど、それが嫌味というのね。

 分った! お兄さんの言うようにする」



 二日後のテレビのニュース番組の中で、『謎の人物、中学校へ侵入い

じめを撮影』と『中学校のいじめの実態』というタイトルでミカの学校

のいじめが報じられた。

「今からご覧いただく画面は、私共に郵送されてきたビデオテープで

す。ビデオテープに映ってる教師から広島市内の中学校であることが分

りました。

 報道部では、今の中学校で何が行われているかを、視聴者の皆様に知

っていただくために、このビデオテープを編集せずに、すべて流すこと

にいたしました」

 と言って、才蔵が映し、ミカが編集したビデオテープが流れた。放送

局へ送った状態と違うのは、ミカを含めて生徒の顔が全てぼかしてある

ことだった。




 翌日、テレビで報道された内容が新聞でも報道されていた。

 朝、つけっぱなしにしていたテレビが、ミカの学校の前で登校してい

る生徒達の様子を映していた。

 チャンネルを回してみると他の民放局も同じだった。

 そのとき、電話が鳴った。

 担任の東からの電話であった。校門には大勢の報道関係の人間がいる

ので、学校の裏口から入って欲しいという。

 東の要望に対して、納得できないものを感じたが、ミカは東の言う通

りにすることにした。




 朝のホームルームで東はクラスの生徒達に言った。

「この学校でいじめが行われていることについて、先生達の間でどうす

れば良いかを色々と考えて、それを実行しようとしていたところ、昨日

と今朝のニュースでこの学校のいじめが報道されてしまった。

 それが残念でならない」

 と言い、いじめられている者、いじめを見た者がいれば、直ぐに言っ

て欲しいと付け加えた。

 東はミカの方には目線を向けずに話していた。

 ミカは白々しいものを感じたが、これでいじめがなくなれば良いとも

思った。


 ==今回はここまで==



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 美奈子で〜〜す。

 テレビ局や新聞社がミカさんの学校のいじめを報道し始めました。

 思わぬ方向に話が進んでいます。―― これからどうなるのでしょう

か? ミカさんも新聞やテレビに取り上げられるのでしょうか? じゃ

あ、才蔵さんも?






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才蔵(サイゾー) 第三章 血のつながり No.16
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小説「才蔵」目次、紹介、あらすじ【現在進行中】 【主な登場人物】

小説「ゴエモン」目次とあらすじ(第一巻終了) 


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 山崎ミカです。


 テレビ局や新聞社が学校のいじめを取り上げ、学校の雰囲気

が変わってきました。−− 学校中大騒ぎです。




 ==では、どうぞ!==
 

 その後一週間、ミカの通っている学校が毎日のようにテレビで報道さ

れ、

「なぜ、こんなにいじめがあるのに学校は放置しているのか」といった

取材を受けている校長が何度かテレビに映し出された。

 また、土曜日にはいじめをテーマにしたPTAの総会が行なわれたよ

うである。

 ミカは両親がいないので、どのような発言があったのか知らない。




 翌週から毎朝、教員とPTAの役員と思われる大人が、校門近くに立

って、生徒達に「おはよう」と声をかけるようになった。

 生徒達は照れくさいとか、気味が悪いなどと言っていた。

 しかし、声をかけられることによって、生徒達の言葉づかいや態度が

良方に変わっていった。

 一方、いじめの方は軽いものは減少したが、特定の者に対しては、よ

り陰湿になり、教師達の目につかないところで依然として行われてい

た。

 二年B組の寺山に対しては、身体に被害を受けるいじめはなくなった

が、生徒達から無視されるという形でいじめが続いていた。

 無視するといういじめは、表面上分らず、寺山に対するいじめはなく

なったと学校では判断をした。




「お兄さん、いじめがなくならないのはどうしてかしら?」

「いじめがなくなると思っているのか?」

「えっ? お兄さんはいじめはなくならないと言うの?」

「考えが変わった。

 いじめを少なくすることはできるが、無くなることはないと考えるよ

うになった」

「どうして?」

「拙者は、戦国の時代とこの時代の二つを見ることができた。

 二つの時代を比べて思うことは、人間は頭脳を働かせて良い道具をつ

くることはできた。しかし、人間自身の進歩はしていないのということ

だ。

 戦国の時代でも、盗みや人殺しが沢山あった。今の時代でも盗みや人

殺しがある。人をだますことも無くなっていない。

 だから人間の内面的なものは進歩しないのだ。逆に後退しているかも

しれない。

 例えば、自動車ができて、交通事故というものが多くあるそうだが、

これは運転をする者の油断から発生する。だから交通事故は無くならな

い。油断するなと呼びかけて、事故を少なくすることはできるであろう

がな……

 いじめも、いじめて楽しみたいという誘惑に負けた人間がすることじ

ゃ。

 だから、いじめはよくないと指導をすれば、少なくすることができる

であろうが、無くなることはないと拙者は思う」

「じゃあ、どうすることもできないと言うの?」

「そうだな。完全に無くそうとするのであれば、その方法はない」

「お兄さんが子供の頃も、いじめがあったの?」

「いつの時代もいじめる子供といじめられる子供がいるものじゃ」

「戦国時代の子供は、いじめられたらどうしていたの?」

「いじめっ子を見ると逃げたであろうから、今の時代のように酷くいじ

められることはなかったと思う。

 今のいじめが陰湿なのは、逃げられない状態でいじめが行われている

からであろうな」

「じゃあ、今の時代でも逃げれば良いのね」


「逃げられるか?

 学校という建物、教室という部屋。学校という建物や教室と

いう部屋のことではないぞ。

 今の時代では小学校や中学校は出ていないと大人になってや

ってゆけないのであろう? そうすると学校から逃げる、学校

へ行かないということは、今のこの世の中の制度から出るとい

うことだ。

 それでもにげられるのか?」


「そうか…… 逃げることができないわ。

 学校へ行かなければ、逃げたことになるのだけど、学校へは行かなけ

ればならないし……

 逃げるところがない今の子供は悲しいね。

 戦国時代の子供は、逃げてばかりいたの?」

「相手にもよるが、いじめられている子供達がまとまって、いじめっ子

を懲らしめることもあった」

「そうか…… 逃げることができないのなら、いじめる子をやっつける

方法があるわね。

 うーん……」

 ミカは腕を組んで考えていたが、何かをひらめいたようである。

「私、やってみよう」

「何をやろうというのだ?」

「私、学校でいじめられている生徒を集めて、いじめている生徒を懲ら

しめてやるわ」

「いじめられている生徒がミカのところへ来るかな?」

「呼びかけても来ないかしら?」

「ミカが、いじめられていたとき、同じような呼びかけがあったら、そ

の者のところへ行ったか?」

「そうねえ、不安で行かなかったかも知れないわ」

「そうであろう。ミカが本当に頼りになる人間かどうかが分らなけれ

ば、人は集まらぬものじゃ」

「じゃあ、どうすれば良いの?」

「ミカが強くなることじゃ。強くなって、いじめている者よりも強いと

いうことが分れば、集まる筈じゃ」

「今の私は強くなっていると思うけど……」

「以前のミカと比べれば強くなっているが、学校で一番強いかどうかは

分らない」


 ==今回はここまで==



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 ミカさんは本気ね。でも、うまく行くのか…… 才蔵さんが助けてく

れるのだろうけど。





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才蔵(サイゾー) 第三章 血のつながり No.17
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 山崎ミカです。


 今回から、私の人生の中で大きな転機になった出来事がは

じまります。この出来事で今までの私とは違う私に生まれ変

わりました。




 ==では、どうぞ!==


 ミカは再び思案していた。

「そうだ……

 いじめをしている者をやっつけながら、今よりも強くなり、

強いということをいじめられている者にアピールするという方

法にすれば良いんだ。

 ねっ! お兄さん」


「お前は変わったな」

 才蔵は笑いながら言った。

「ミカにやられた者が仕返しをしてくると思うが、良いのか?

 懲らしめられた者同士がまとまって仕返しをしてくるやも知れぬぞ」

「大丈夫よ、そのときはお兄さんが助けてくれるでしょ」




 翌日の昼休み、体育館の側の空き地で、二年B組のタケシとシズカが

地面に転がっていた。側にミカが立っている。

 タケシとシズカは、寺山をいじめていた二年B組の生徒である。

 この二人がクラスを牛耳っていた。

「あなた達、寺山さんをいじめるとこうなるのよ。

 寺山さんにしかとしているそうだけど、なぜ、いじめるの。

 再びいじめるようなことがあれば、私があなた達をいじめる

よ」


「俺達がやっているんじゃなあい。クラスの者がやっているんだ」


「クラスの生徒にさせているのは、あなた達じゃあない。嘘を

言っても駄目よ。

 それに、仮にクラスの生徒達がやっているんなら、あなた達

が止めさせなさいよ」


「わっ、分ったよ」

「分ってくれたのね。良かった」

 ミカが立ち去ろうとした。その時、タケシが立ち上がってミカの後ろ

から殴り掛かろうとした。

『ミカ、後ろだ』

 才蔵の声がミカの腹に聞こえてきたと同時に、タケシが後方から右手

で殴り掛かろうとしてしている姿が、ミカの脳裏に映画のスクリーンの

ように絵として浮かんだ。

 とっさに、ミカは体を沈めながら後方に向きを変えた。

 タケシの腕は空を舞い、空振りに終わろうとしていた。

 ミカは沈めた体を浮かしながら、右足でタケシの腹を真正面から強く

蹴った。

「うーっ!」

 タケシは、腹を押さえて倒れた。

「タケシー!」

 シズカがタケシの側に寄った。

「何度言ったら分るの。もう一度、私と戦う?」

 タケシとシズカは、脅えた目でミカを見ていた。




 その日のうちに、ミカは学校の掲示板に

”いじめを受けている人達へ

 私と一緒にいじめをしている人を懲らしめましょう。

 私に連絡を下さい。

 二年D組 山崎ミカ”

 と書いた紙を掲示した。

 しかし、いじめられている者からの連絡はなかった。




 翌々日、三年生の永田がミカ達のいる教室に入って来た。

 永田は、学校の屋上でミカに負けたことからか、ミカを睨みつけて言

った。

「おい、山崎!

 お前、今日の放課後、一人で体育館の裏へ来い!

 絶対に来いよ!」


「分りました。行きます」

 長田が教室から出て行った後、

 中沢恭子が、「本当に行くの? 先輩は、たぶん一人じゃあないよ」

「何か知っているの?」

「えっ? ええ! 山崎さんが掲示したことで、永田先輩が、山崎さん

をやっつけようと、他のクラスの生徒達に呼びかけをしているような

の」

「そうなの―― で、何人くらいになるの?」

「さあ、分らないけど十人はいるんじゃあないかしら」

「ふうーん、そう」

 中沢もいじめる立場の者である。だから、ミカは、中沢の前で平気を

装っていたが、内心は心配になってきた。

『ミカ、ここが正念場だぞ。

 今日の放課後を乗り越えれば、今までいじめられていた者達がミカの

元に集まってくるはずじゃ。

 それから、いじめはもっと少なくなる』

『でも、本当は私、心配なの』

 ミカは、銀杏の樹を見て言った。

 その銀杏の樹の葉陰に潜んでいる才蔵は、

『ミカは、孫子の兵法を知っているか?』

『いいえ、聞いたことないわ』

『そうか、では放課後まで時間があるから教えてやろう』


 ==今回はここまで==




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 さあ大変! 戦いながら強くなると言った、その数日後に永田から呼

び出し――  中沢恭子の話では相手は十人はいそうだ。

 永田はミカさんに負けている。―― 負けた者の仕返しはこわい。

 一対十でミカさんは大丈夫?

 才蔵さんが孫子の兵法を放課後までに教えると言っているけど、孫子

の兵法って何? 戦いに勝つ方法のように思えるけど、そんな教えを受

けただけで勝てるのかなー……




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才蔵(サイゾー) 第三章 血のつながり No.18
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 山崎ミカです。

 さあ! 私と先輩達の戦いが始まります。

 前置きはやめます。読んでください。

 

 ==では、どうぞ!==



 午後の授業中、ミカは銀杏の樹の上の才蔵から戦い方を教わってい

た。




 放課後になった。

 ミカは一人で体育館とは逆の方向に向かい、学校の敷地の外に出た。

遠回りをして、体育館の裏にいる永田達の側面まで来て隠れた。

 才蔵から、先ず敵情を知らずして戦うと負けると教わった。永田達の

側面に来たのは、敵情を知るためである。



 永田を中心にして、四十人を超える生徒達がミカを待っていた。


 タケシやシズカの姿も見える。

 ミカの学校は一年から三年まで各学年五クラスあり、全部で十五クラ

スある。

 いじめをしている者が、それぞれのクラスから二人から三人集まった

ことになる。

 彼らはみな素手で、武器らしいものは持っていない。



 一方、ミカは銀杏の樹の枝で作った木刀と途中で拾った小石をポケッ

トに入れて持っていた。木刀は、才蔵が作ったものである。

 ミカは才蔵から、どんなに強い者でも、一度に多人数と戦うと負け

る。−− だから、多人数と戦うときは、敵を撹乱して一人一人と戦う

のが良いと教わった。




 永田達の側面から後方に回り、続けざまに小石を投げ、隠れた。

 集まっている所に投げるのであるから、狙いをつけなくても、誰かに

当った。

「あっ、痛ーっ! だっ、誰だ!」

 小石が当った何人かが後ろを振り返った。二人は、頭を押さえて倒れ

た。

「どうした?」

「あそこに誰かいる。山崎だと思う」

 小石を当てられた別の者が、腰を押さえながら言った。




 二人の男子生徒がミカの隠れている方に歩いて来た。

 ミカは、二人に姿を見せた。と同時に木刀で二人の足を殴りつけた。

「うぎゃー!」

 二人が倒れた。

「どうした?」

 永田が振り向きながら言った。−− 既にミカは隠れ、元の側面に走

った。




「うーっ!」

 今度は、永田の側の三人が倒れた。−− これは、別の方向から才蔵

が投げた小石によるものである。

 才蔵はミカと違い、確実に狙いをつけた者を倒している。

 永田達は、才蔵が隠れている方向を向いた。




 今度はミカが小石を投げた。一人が悲鳴を上げた。

「相手は山崎一人じゃないぞ。沢山いるぞ。

 いじめられていたやつ等、まとまりやがったんだ。

 おい、どうする。負けてしまうぞ」


 永田の周りにいた生徒達が言い合ってる。

「山崎ーっ、卑怯じゃあないか。石など投げて……

 一人で来いと言ったはずだぞ」


『ミカ、姿を見せてやれ。

 ただし、直ぐに隠れるのだぞ』

『わっ、分った』


 ==今回はここまで==



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 相手は十人くらいじゃあなかったの? よっ四十人!

 才蔵さんが言った孫子の兵法って、この戦い方なの?

 確かに、四十人とミカさん一人が向かい合うと完全に負けてしまうわ

ね。才蔵さんから教わった戦い方は有効だね。――  でも、このまま

良い状態で戦うことが出来かしら?  次回が楽しみってとこね!





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 山崎ミカです。


 今回で決闘は終わります。

 



 ==では、どうぞ!==


 ミカは、永田達の側面から姿を現した。

「卑怯なのは永田先輩じゃあないですか!

 私一人にこんなに大勢でかかってくるなんて!」


「一人だって? 嘘を言うな! 他にも何人かいるだろう。

 姿を見せろ!」


「私、一人です」

 ミカは、隠れて才蔵が小石を投げた場所に走り、そこで再び姿を現し

た。

「先輩、こっちですよーっ」

 ミカは笑いながら言った。

 永田はミカの方に向き直しながら言った。

「本当にお前一人何だな?」

「一人ですよ。その一人に何を恐れているんですか。

 先輩は、また私に負けるのが恐くて、沢山連れてきたので

しょう。弱虫ですねー」


 ミカは、才蔵から相手の心理を惑わしながら戦えと教わっていた。

「永田、お前。こんな二年生にやられのか?」


「ええ、本当ですよ。学校の屋上で顔から血を流しながら倒れ

たんですよー。

 ねえー、永田先輩」


 ミカは、大きな声で言った。

「うっ、うるさい! 黙れ!」

「はっはは、永田。こんな奴、俺がやってやるよ。

 他の者は出てくるなよ」


 と言いながら、一人の三年生がミカの方に歩いて来た。

 ミカは、木刀を草むらに隠した。大勢の目の前で戦うときは、相手と

同じ条件、すなわち、素手でなければ後々の影響が大きくない。

 その三年生はゆっくりとミカに近づいてきた。距離が一メートルにな

ったところで、柔道の構えをした。

(そうだ、この人は柔道部の主将だ)

 ミカは思い出した。

『ミカ、そいつに捕まってはならぬぞ。そいつを負かしても、捕まって

いれば他のものに袋叩きにされてしまうぞ』

 ミカは一メートル後方に飛んだ。相手は迫ってきた。ミカは姿勢を低

くして、隠していた木刀を握り、相手に向かって飛び込みながら、腹に

思いっきり木刀を突き刺した。

 相手の三年生は、腹を押さえて前かがみに倒れ込んだ。

 ミカは、相手の体に触れぬように後方に飛んだ。

 ミカの前に倒れている三年生は、動かない。




 永田の周囲にいた者はあっけにとられて見ていた。しかし、ミカが木

刀を使ったとは知らない。

「永田先輩、どうしたのですか?

 私を呼び出して、何もしないのですか?」


 ミカは大きな声で言った。

「永田。お前に誘われて来たが、俺達には関係ない。

 俺は帰るぞ」


 永田の側にいた三人が、そう言いながら立ち去ろうとした。

 それにつられて二年生や一年生も立ち去ろうとしていた。

「待ってください。

 皆さんがいじめを続けるとこの先輩と同じ目に遭いますよ。

 いいですね。

 これからはいじめをしないと約束してください」



 ==今回はここまで==



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 ミカさん、やっちゃたね! 才蔵さんから教わったって言っても、で

きるもんじゃあないわよね。だって、この状況では気が動転して何がな

んだかわからなくなてしまうと思うのよね。

 ミカさんが落ち着いて戦ったから、勝てたのだと思う。




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 山崎ミカです。

 今回で第三章は終わりです。―― 次回から第四章…… 才

蔵お兄さんの活躍です。

 今回は少ない文章でごめんなさい。




 ==では、第三章の最後です。どうぞ!==


「分ったよ。約束するよ」

 立ち去ろうとした三年生が言った。

 他の者もうなずいた。

「永田先輩は、どうですか?」

「やっ、約束するよ!」

 永田はうな垂れて言った。

 その時、体育館の中から



「わー」


 と言う歓声があがった。

 体育館からいじめられていた者達が出てきた。その中には寺山もい

る。

 彼らは、体育館の中から成り行きを見守っていたのである。

 ミカを取り巻いて、

「ありがとう」

 と口々に言った。

 ミカは、彼らが体育館の中にいることを知らなかった。




 その夜、ミカは才蔵に聞いた。

「お兄さんが寺山さん達を体育館に呼んだの?」

「いや、違う。

 拙者は、体育館に彼らがいることを知っていたが、拙者が呼んだので

はない。

 彼らの意志で来たのだ。

 ミカがいじめられている者に連絡をくれるよう掲示したのを見たが、

連絡をするといじめがひどくなるのではないかという不安があったであ

ろう。しかし、ミカの熱意も分っていた。

 だから、体育館に来て、ミカが勝つように願っていたのだろう。

 これからは、ミカの思うような学校になると思うぞ」

 才蔵は笑って言った。



 ==今回はここまで==



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 良かった、良かった。 これでいじめもなくなるでしょうね、…… 

いや、きっといじめは出てくると思う。人間が生きてる限り無くならな

いんじゃないかしら? 人間って、そんなに賢いとは思えなくなっちゃ

たから。だって、才蔵さんも言っていたでしょ。人間が使う道具は進歩

しているが、人間そのものは人歩していないって、全く同じ言葉ではな

かったけど、同じようなことを言ってたでしょ。

 あれって、二つの時代を見た人間だけがいける言葉だと思うの、そし

て、真実だと思うの…… だから、人間そのものは進歩しないんだか

ら、いじめは再び出てくるんじゃあないかしら。




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才蔵(サイゾー) 第四章 佐助  No.1
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 山崎ミカです。


 今回から、第四章がはじまります。

 この章で、なぜ才蔵お兄さんがタイムスリップしたのか?

 マンションから飛び降りた私がなぜ才蔵お兄さんに助けられ

たのか?

 これらは偶然ではありませんでした。その謎がこの章でわか

ります。




 ==では、どうぞ!==


第四章 佐助


 ミカは才蔵から教わって毎日忍びの練習を続けていた。

 その練習の合間に才蔵は、ミカのところに送られてきた預金通帳に入

金があるかどうか調べるように言った。



 翌日、銀行のキャッシュコーナーで預金通帳を差し込んだが、最初に

入っていた五十万円だけで、その後の入金はなかった。

 広山が毎月五十万円を払い込むといってから、三か月目に入ってい

た。




 その深夜、才蔵は広山の娘婿である佐藤のマンションに忍び込んだ。

佐藤と妻の一恵は、ツインベッドに並んで熟睡をしている。

 部屋には薄い明かりがあった。才蔵はそれを消し、部屋を暗闇にし

た。

 広山にしたのと同じように、佐藤の頭を黒い袋で覆い、佐藤の体に覆

いかぶさり、右手で口をふさぎ、両肘で佐藤の両肘を押さえ、両足で両

膝を押さえた。

 これで佐藤は目を覚ましても身動きが取れない。

『佐藤、佐藤』

 佐藤の腹から聞いたことのない声が響いてきた。

 今、目が覚めているのか、未だ眠っているのか、佐藤には分らない。

 体を動かそうとした。大きな声を出そうともした。

 しかし、何者かが体を固定しているため、体を動かすことも、大きな

声を出すこともできない。

 金縛りにあっていると佐藤は思った。

『佐藤、お前が山崎慶子を殺したのだな』

「……」


(返事をしなければならないのか? 返事をしなかったらどうな

るのか?

隣で寝ている一恵は何をしているのだ? 助けてくれ!)


 佐藤は、意を決して応えることにした。しかし、口を動かすことがで

きない。

 再び、佐藤の腹から声が響いてきた。

『返事をしろ! お前の妻はぐっすり寝ている。

 心で言えば拙者には聞こえる』

『知らない、何のことだ』

『世間はだませても、拙者をだますことはできぬぞ。

 あの世から、おまえ達のことを見ていたのじゃ

 お前が広山から命令を受けて、山崎慶子、いや、渚を殺したのを知っ

ているぞ』

 佐藤は、広山から閻魔大王と名乗る不明の者に忍び込まれたことを聞

いていた。

『あっ、あのう。閻魔ですか?』

『ふっふふ、そうじゃ、あの世から来た閻魔じゃ』

『すっ、すみません。私は殺したくなかったのですが、社長の命令でや

むを得ず、殺してしまいました』

『お前に反省の心があるのか』

『はっ、はい。申し訳ないと思っています』

『お前はなぜ、広山の命令通り、山崎に五十万円を振り込まないのだ』

『あなたのことは広山社長から聞いています』

『ふっふふ…… 分かりが早いようじゃな』

『広山社長から、拘置所や刑務所に入っている間は殺されることもない

だろうから、送金は一時中断するように言われましたので……』

『何と、欲深いことよ。

 お前は、山崎の家族の者に申し訳ないという気持ちが、本当にあるの

か、どうだ?』

『勿論です。社長の命令とは言え。

 申し訳ないことをしました』

『ならば、明日にでも、山崎の家族へ送金してやれ。

 広山は拙者が殺す。広山が死んだ後は、お前が毎月送金をするのだ

ぞ。

 もし、お前が送金をしなかったら、お前も死ぬことになるぞ』

『わっ、分りました』

『お前が、山崎慶子を殺したときの様子を申してみよ』

『……』

 才蔵は、佐藤の口を押さえている手で、口と鼻を閉じた。

『言わぬと、お前は死ぬぞ』

『佐藤は口を動かそうとした』

『心で言え、心で言い始めぬ限り、お前は息ができぬ』

『広山社長から命令を受けて、ホワイトホースの前で渚さんが…… い

え、あの、山崎さんが出てくるのを待っていました』

 才蔵は、未だ口と鼻を押さえつづけていた。

『すっ、すみません。息をさせてください』

『続けて話せば、息をさせてやろう』

『山崎さんが、ホワイトホースから同僚のホステスと一緒に出てくれ

ば、別の日にするつもりでしたが、山崎さんは一人で出てきました』

 この時、才蔵は、鼻から手をずらした。佐藤は鼻で大きな息を始め

た。口は閉じられている。

『息をしながら続きを話せ』



 ==今回はここまで==



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 美奈子で〜〜す。

 佐藤がミカさんのお母さんを殺したときのことを話し始めました。

 ミカさんが知ったら、どう思うでしょうね? この小説はミカさんが

書いているのだから、今では知ってるけど、―― 才蔵さんからお母さ

んが亡くなった時のことを聞くんだろうけど、たまんないわよね。





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才蔵(サイゾー) 第四章 佐助  No.2
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小説「才蔵」目次、紹介、あらすじ【現在進行中】 【主な登場人物】

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 山崎ミカです。


 佐藤が私のお母さんを殺したときのことを話し始めました。

 後で才蔵お兄さんから聞いたときは、悲しみ、怒り、悔しさ、

色んな感情が織り交ざり、何がなんだかわからなくなりました。

 あれから数年が経ち、今はこうして小説に書くことができる

ようになりました。




 ==では、どうぞ!==


『私は、広山社長のお供で山崎さんと何度か会っていましたので、車で

山崎さんに近寄り、家まで送ると申し出ました。

 山崎さんは、いつものようにタクシーで帰るといって、断りました

が、私のマンションと山崎さんのマンションは近いことを教え、二度、

三度と車に乗るように言いました』

『それで山崎慶子は、お前の車に乗ったのだな』

『はっ、はい、そうです。

 車の中で殺そうとしましたができませんでした』

『なぜ、殺せなかったのだ?』

『私に、その勇気がありませんでした。

 山崎さんが住むマンションの下に着いて、彼女が車から降りた時に、

後ろから首を絞めました』

『そこで殺したのか?』

『いいえ、山崎さんは気を失っただけでした。

 それで車に乗せ、意識を取り戻しても動くことができないようにロー

プで縛り、水に溶かした睡眠薬を大量に飲ませました。

 むせて、せき込んだりしたので、気絶状態から意識が戻りました。

 ロープで縛られた山崎さんは、助けて欲しいと何度も訴えていました

が、私の方は、恐くて山崎さんが早く死んでくれれば良いと願っていま

した。

 手足を縛った跡が残ると自殺と判断されないと思いつき、睡眠状態に

なってから、ロープを解き、手足をマッサージしました。

 二時間が経過した頃、息をしなくなりました。

 その時はすでに、車で市内に戻り、太田川の河畔に来ていましたの

で、死体を河畔において、私は家に戻りました』

『お前は、山崎のマンションの場所を知っていると言ったが、家族を知

っているか?』

『はい。会ったことはありませんが、知っています。

 山崎さんが亡くなって、中学生のお嬢さん一人になりました。

 申し訳ありません』

『支払いを忘れると、お前を殺すといったが、お前の一人娘も亡くなる

かも知れないぞ』

『えっ、そっ、それだけは止めてください。

 山崎さんに忘れずに送金をしますので、マミだけは助けて

ください』


『ほう、お前の娘はマミというのか。

 殺されたくなければ、送金をすることじゃな』

 才蔵は素早く、佐藤の顔を覆っている黒い袋を取り去りながら、佐藤

の体から飛び離れた。

 佐藤は、「はー、はー」と息をしている。

「一恵、一恵。起きてくれ!」

 と言いながら佐藤は寝室の電気を点けたが、隣のベッドで一恵が寝て

いるだけで、才蔵の姿は既になかった。

 佐藤は、一恵を揺り起こした。

 妻の一恵は寝ている途中で起こされ、不機嫌な顔をしている。

「一恵、お前は何ともないか?」

「何を寝ぼけているのよ!」

「いや、誰かこの部屋に入ってこなかったか?」

「誰もいないに決まっているでしょ」

「あっ! マミ、マミ」

 と言って、マミが寝ている子供部屋へ駆けた。マミは何事もなかった

ように無邪気な顔をして寝ている。

 佐藤の様子を見て、一恵が怒って、

「こんな時間に、何をしているのよ」

「しゃ、社長を襲った閻魔大王が私のところへもきたのだ」

「何をばかなことを言っているの。

 夢でも見たのじゃあない?」


 一恵は、ふてくされて布団で顔を覆って再び眠りについた。

「金縛りにあって、夢を見たんだろうか……」

 佐藤は、夜明けまで再び寝ることができなかった。





 一方、才蔵は広山が逮捕された県警本部へと夜の空を飛んだ。

 広島県警の建物の中で罪を犯した者が収容されている所を調べたが、

広山の姿はなかった。

 宿直室へ忍び込んだ。

 五人の警官が寝ていた。いずれも体を鍛えていると思われる者ばかり

だった。

 才蔵は持っている黒い袋を自らが被り、目の部分を小刀で切り取っ

た。

 一人の警官の上にまたがると同時に、相手の顔に十センチ程度の近さ

に才蔵の顔をおいた。

 相手の警官は才蔵が乗ったことにより、目を覚ましたが、才蔵は素早

く催眠術をかけた。

『お前に尋ねることがあるが、心の中で答えよ』

『はい』

『逮捕された広山は今どこにいる?』

『広山…… 河田議員への贈賄容疑で逮捕された広山ですか?』

『そうだ』

『県警本部から広島地方検察庁に移されました』

『その検察庁のどこにいる?』

『建物の中の拘置所にいるはずです』

『検察庁はどこにある?』

『この県警本部の隣の建物です』

『よし、分った。

 お前は、このまま三時間眠りつづけるのじゃ』


 ==今回はここまで==



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 美奈子で〜〜す。


 才蔵さんは無敵ね。でも、誰にでも同じようにするというのではなさ

そう。広山や佐藤に対しては、上から覆いかぶさって身動きできないよ

うにしたけど、体を鍛えている警察官には、先ず催眠術をかけているも

のね。

 警察官に覆いかぶさっても、相手に身動きできないようするだろうけ

ど、体を鍛えていれば佐藤と違い、少しぐらいは動けるかもしれない。

そうすると、相手に与える恐怖心のようなものが半減する。だらか、催

眠術をつかったのね。





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才蔵(サイゾー) 第四章 佐助  No.3
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 山崎ミカです。


 才蔵お兄さんは、広山を執拗に攻めます。ちょっと行き過ぎ

って思うけど、―― でも、そのお陰で私と才蔵お兄さんにと

って、大切な人と出会います。それがこの第四章なのです。

 その人がなぜ大切な人か? 例えば、私とお兄さんを助けて

くれるとか、そういう事実はこの小説の中では最後まででてき

ません。

 もっと未来に私達には無くてはならない立場になる人なんで

す。

 その人は誰? 今から種明かしをします。

 その人は…… 佐助さんです。




 ==では、どうぞ!==


 才蔵は、この時代のことが大凡分ってきたが、犯罪者を扱うシステム

は知識になかった。

 警察の取り調べを受けているときは警察の留置所に入っているが、警

察から検察庁へ移されると裁判で刑が確定するまでは拘置所に入れられ

るのである。

 裁判で刑が確定した後に、刑務所に送られることになる。

 才蔵は、そっとその警官の体から離れ、隣の建物へ移動した。

 検察庁の拘置所に入ったが、鉄製の格子が張り巡らされ、監守がい

る。

 その向こうに同じ鉄製の格子でできた部屋がいくつもある。広山はそ

のいずれかの部屋に入れられているのであろう。

 才蔵は天井と床下を調べたいずれも厚いコンクリートであった。しか

し、三十センチ程度の空間はある。

 才蔵は、その床下のコンクリートの隙間に入った。

 コンクリートに耳を押し立てると、いびきの聞こえる場所、微かに寝

息の聞こえる場所がある。

 才蔵は、その一つ一つの収容者の腹に響くように『おい、起きろ』と

言った。

 その反応を聞きながら広山を探すのである。




 六人目に広山にたどり着いた。

『広山、広山。

 久しぶりだな、閻魔大王じゃ。

 お前は、拙者は拘置所や刑務所には入れないと思っていたのであろ

う。

 ふっふふ』


「監守さん、監守さん。来てください」


 広山は大声で叫んだ。

 監守は、収容者達のいるスペースに入るために、鍵で鉄格子を開けて

中に入った。

「どうしたんだ、広山さん。こんな時間に。

 皆が起きるから、静かにしなきゃあ駄目じゃあないか」


「監守さん、閻魔大王が来ているんだ。助けてくれ」

『広山、無駄なことをするな。

 拙者は、あの世から来た者じゃ。

 お前にも、あの者達にも拙者の姿は見えぬ』

「監守さん、聞いたでしょ。

 私のところへ閻魔大王が来ている。助けてくれ」


「広山さん、ふざけるにしても度が過ぎていると思いませんか。

 いい加減に寝ないと、検事に報告しますよ」


『広山、拙者はお前を殺すことにした』


「わっ、私を殺したら山崎へ支払えなく

なるぞ」


「広山、いいかげんにしろ。静かにしないと他の者が眠れない

じゃあないか」


 監守が怒鳴った。

『広山、そんなことを大声で言って良いのか。

 お前が殺人に係わっていることも警察へ知られてしまうぞ』

「……」

『私が死んだら、山崎の家族へ送金ができなくなるがよいのか』

『ふっ、ふふ。馬鹿め。

 お前がいなくても佐藤が送金をすることになっているのではないか。

 佐藤が送金をしなければ、佐藤の娘、お前の孫のマミとか言ったな。

 あの子を殺すまでじゃ』

『まっ、待ってくれ。孫は関係ない。

 孫を殺すのは止めてくれ。

 送金をしなかったのは悪かった。佐藤に送金をさせるから

許してくれ』


『良かろう。佐藤が送金をする限り、孫の命を取らぬ。

 じゃが、お前は死ぬのだぞ。お前は約束を破ったからな』

『たっ、助けてくれ』

『ふっふふ』

 不気味な笑い声と共に才蔵の声が消えた。


 ==今回はここまで==



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 美奈子で〜〜す。


 才蔵さんは広山を本当に殺す気かしら? それとも脅し続けて恐怖心

が増すようにしているのかしら? 殺さなくても、このまま続けると広

山は精神的に変になって自殺してしまうかも知れないね。




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才蔵(サイゾー) 第四章 佐助  No.4
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 山崎ミカです。


 前回、才蔵お兄さんは広山を探して、拘置所にたどり着き

ました。

 そして、広山に声を掛け、恐怖心を植えつけさせようとし

ています。




 ==では、どうぞ!==


 コッコッと歩く音が才蔵に聞こえてきた。

「広山さん、寝ないと体が弱りますよ。寝なさい」

 監守の声がした。




 一時間後に、広山の腹に才蔵の声が響いてきた。

『ふっふふ、広山、広山』

『お願いだ。助けてくれ』

 才蔵は返事をしなかった。




 再び、一時間が経過して才蔵の声が広山に響いてきた。

 才蔵は一時間おきに広山に声をかけているのである。





 夜が明けた。

 朝食は、監守が見ている中で収容者達がそろって行なう。食堂まで歩

くスリッパの音が才蔵に聞こえてきた。

 才蔵は床の下を這って廊下に上がった。食堂の天井裏に入り、食事を

している広山に声をかけた。

『広山、お前が食べている物の中に毒が入っているかも知れぬぞ。

 ふっふふ』

「おや、あんた。食べたくないのか?

 じゃあ、俺が代わりに食べてやるよ」

 という若い男の声が天井裏の才蔵の耳に入った。

『広山、お前は呪い殺されるのじゃ』

「助けてくれーっ!」広山は大声で叫んだ。

「広山さん、黙ってたべなさい」という看守の声と、

「あんた、相当参っているね。

 どんな罪を犯したか知らないが、検事さんに正直に白状すれば気が楽

になるのではないかな」

 と言う広山の近くに座っていた年老いた収容者の声が才蔵に聞こえ

た。

『白状しても、お前の場合は死ぬのだ。

 ふっ、ふふ。

 気が触れて、飛び降り自殺などがお前に似合っているなあ。

 それとも、お前の望みがあれば、望み通りの殺し方をしてやっても良

いぞ』

 広山は、ガタガタと震えている。




 午後、広山の取り調べが行なわれた。

 拘置所から出て、検事室までの廊下を広山は歩いている。

 広山の両手は手錠でつながれ、その手錠と腰に巻いたロープがつなが

っており、さらにそのロープの端を監守が広山の後ろで持っている。

 広山が歩いている廊下は四階である。左側に窓、右側は検事の取調室

が並んでいる。

『広山、窓に近づいて歩け。

 外の景色は良いぞ。お前は、その景色の中に飛び込むのだ。

 拙者がお前の背中を押してな、ふっふふ』

 広山は後ろを振り向いた。そこにはロープの端を持った監守がいる。

「私を落とさないでくれ、助けてくれ」

 監守に向かって広山がつぶやいた。




 取調室に入った。

 検事が広山に話しかけている。

「広山さん、どうしましたか?

 訳の分らないことを言ったり、一晩中ぶつぶつと言っていたそうです

し、今朝は食事も取ってないという報告が来ていますよ」

「いえ。何でもありません。

 申し訳ありませんでした」

「あなたは、河田省三さんに湾岸工事の入札において、便宜を図っても

らったお礼として、前金として五千万円を支払い、さらに後金として五

千万円を支払う予定にしていたということでした。

 後金の五千万円は既に用意していると思いますが、どこに隠している

のですか?」


「そっ、それに関しては、昨日も申しましたように、盗まれた

のです」


「何処で盗まれたのですか。あるいは、いつ盗まれたのですか。

 そこのところをはっきりとしたいのですが」

「そっ、それは……」



 ==今回はここまで==



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 美奈子で〜〜す。


 才蔵さんは広山を殺す気ね、ノイローゼにして自殺させようとしてい

るとしか思えないものね。





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才蔵(サイゾー) 第四章 佐助  No.5
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